4.趣味の店の成立する可能性と手法について


 いまもむかしも、いわゆる「趣味の店」は成り立たせるのが難しいと言われてきた。なぜって、客になりうる同じ趣味を持った人が少ないからね、と。
 が、フットボールに関しては、こちらの記事で書いたように、商売として成り立つとは思っています。


 ただし同時に、昔ながらの「趣味の店」としてやっていこうとすると陥りやすい危険があるとも思っています。
 いわゆる趣味の店っていうのは、ごく小規模な専門店です。そして、店主はたいていその趣味にドップリの人です。そこに同好の士が集まる。その趣味一色の店になる。フットボールが題材の店であれば、店主がひどいフットボール・マニアで、お客さんもみんなフットボール・ファン。もとがマイナーな趣味ですから、常連さん中心のお店になっていきます。

 このとき、お店はメディアになります。そこで情報を発信する(=コンテンツをつくりだす)のは店主。常連さんはフットボール・マニアの店主を目当てに店にくるとも言える。しかしいかにマニアの店主といえども、常に幅広い客層にとって面白い情報を提供できるわけではない。店主だって好きなチームもあれば見たい試合もあるわけです。
 すると、どうしてもコンテンツの幅が狭くなっていく。もともとフットボールという趣味を題材にしてたのに、さらにその中で、カウボーイズというサブ・ジャンルに特化した店、とかになっていく。そうなれば、客層もさらに限定されて、常連も濃くなって、店としては縮小していかざるをえない。よくある、変なオヤジと常連だけの店、の出来上がり。
 これだとちょっと楽しくないんですよね。少なくとも当事者以外は入り込みづらい。なにより発展性がないし、フットボール・ファンの拡大っていう大きな側面を見たときには全然貢献できない。


 このように商売がシュリンクしていってしまう原因は、店主への負担の一極集中かと思っています。
 商売に必要な要素は、
・ヒト
・モノ
・カネ
・情報
 なんていわれます。

 上記の趣味の店モデルでは、
・ヒト=店主=店を用意する
・モノ=コンテンツ=店主
・カネ=資本=店主が用意する
・情報=経営ノウハウ=店主、もしくは、ない。
 という図式になってしまう。店主大変。どうしたって消耗するか消費されてしまう。


 ならば、もっと店主の負担を軽くすればいい。店主は単純に店という「場」を用意する人であって、そこに集まる人たちが、同じ趣味を持っている人たちなのだから、お互いにコンテンツになりあえばいい。
 という考えにもとづいて、このブログで言う「フットボール酒場」はデザインされています。
 つまり、
・ヒト=店主=店(場)を用意する
・モノ=コンテンツ=客がつくる、または客そのもの
 というかたちにシフトさせて、負担を分散し、かつ客も含めたみんなでつくって遊ぶ店、というかたちです。
 さらにいえば、残りのカネと情報も、
・カネ=共同出資=店主も客も等しくオーナーに
・情報=可能であれば外部のノウハウを利用
 ということができれば最高。
 店主と常連客という固定された人間と関係だけで形成される店よりも、客それぞれがコンテンツでありオーナーであった方が、提供されるコンテンツや楽しみのバリエーションも増えるし、各オーナーそれぞれが店を広め新たな客を呼ぶことにもなる。いろんなチームのファンがいて、交流もできたりして、新しいフットボール・ファンも生まれたりする。きっと楽しい。


 さらに、この店のデザイン形式と、経営資源の一つ「情報(ノウハウ)」は、他のジャンルの趣味の店にも転用可能です。例えばアイスホッケーでもいい、ハンドボールでもいい、落語でもいい。そういう趣味を題材とした「場」をつくるための先行事例になって、他の趣味の店を開きたい人にフィードバックができれば最高だと思います。
 現在の負担の大きい店主にはなれなくとも、場を主宰して同じ趣味を持った人たちのハブになるくらいなら大丈夫、という人はまだまだたくさんいるはずだと思っています。街にもっとたくさんのマイナーな趣味の店ができていったら、きっともっと面白い。