NFLオーナー物語(AFC編)


主に横浜方面で、日本プロ野球のチームの売買が行われてるということで盛り上がっております、いろいろと。プロチームを所有するってことはなかなか憧れるものですが、日本のプロ野球では基本的にチームは企業の宣伝素材として扱われているようで、個人で所有している例もありませんし、球団自体は赤字でも構わないって考え方のようです。

しかし海の向こうでは、チームのオーナーってのは基本的に個人です。
しかも、もちろん莫大な財産を築いた大金持ちが趣味の延長でチーム買っちゃったよ嬉しいなーってのが多いのですが、特に金はなくともなんとかかき集めたり支援者を募ったり、あるいは共同で所有したりという、大資本に頼らない形も成立している。その中でオーナーが、チームの運営をするってことを生業にしている。チーム自体が黒字でないとこのようなことはできないのでしょうが、つまり今の日本プロ野球の構造では全く無理なのでしょうが、なかなか興味深いところです。


そんなわけでひとまず各チームのオーナーがそれぞれどんな人たちなのか、ざっと調べてみました。


まず<AFC編>から。

・チーム名
・オーナー名
・オーナーの生まれ年
・いつからオーナーか
・オーナーになるまでの過程など
の順です。


■東


Buffalo Bills
Ralph Wilson
1918
1960-
チーム創設者。
二次大戦から帰ってきた後、父親のやっていた保険会社を受け継いで、さらに工場に投資したり買収したりして事業を拡大したそうな。もともとそれなりの金持ちだったけど、さらに稼いでフットボールチームもつくりました、と。


Miami Dolphins
Stephen M. Ross
1940
2008-
不動産開発事業大手The Related Companies, L.P.の創始者でありCEO。
ドルフィンズ(とスタジアム)は合計15億5000万ドルで株の95%を購入。オーナーになって最初にやったのはビル・パーセルズをクビにすることだった。さらに勝手にスタンフォードにハーボー雇いにいったり、なかなかアグレッシブ。


New England Patriots
Robert Kraft
1941
1994-
製紙産業で働き、独立して自分の紙製品製造会社を設立。それを成長させ事業分野も次第に多岐にわたっていき、いまでは紙製品、包装、エンターテイメント、スポーツ、不動産、資産運用などを扱うThe Kraft Groupに。事業展開の中で、もともとファンだったペイトリオッツを買ったってことらしい。


New York Jets
Robert Wood Johnson IV
1947
2000-
4世だよ4世。初代Robert Wood JohnsonがJohnson & Johnsonの創業者。父親である3世の世代ですでにJohnson & Johnsonを離れているので、もう直接の関係はないのかもしれない。それでも4世自身はJohnson Company, Inc.という投資会社を持っていた資産家であり、老舗の直系にふさわしく、国やら軍やらとコネがある様子。
ジェッツは当時6億3500万ドルで購入とのこと。


■北


Baltimore Ravens
Steve Bisciotti
1960
2004-
Aerotekの創業者の1人。この会社はエンジニア系に特化した人材派遣会社だったとのこと。フルキャストが球場のネーミングライツじゃなくってチーム買っちゃった感じですかね。違いますね。


Cincinnati Bengals
Mike Brown
1937
1991-
創設者でありコーチだったPaul Brownの息子。Paul Brownは(前の)Cleveland Brownsの創設者でもある。Paul Brownの死後、相続した。オーナーにとってチームは資産ですからねえ、相続くらいするよなやっぱり。


Cleveland Browns
Randy Lerner
1962
2002-
投資アナリストとして出世し、やがて独立。その後も成功し、個人資産部分だけでも15億ドルとか。しかしブラウンズは父親Al Lernerから相続したもの。なんぞこのボンボン+出世とかって完璧人生。
父親Al Lernerは、不動産業・銀行業で財をなした。ブラウンズは1998年に5億3000万ドルで経営権を購入、99年から新ブラウンズとしてリーグ参加。
ちなみにRandy LernerはプレミアリーグのAston Villaも所有。MLBインディアンズのオーナーLarry Dolanは叔父。金持ちスポーツ好き一家。


Pittsburgh Steelers
Dan Rooney
1932
1988-
スティーラーズ創始者Art Rooneyの息子。チームは家族で所有してるが、その中心になっている。
自身は現在アイルランド大使となっているが、2009年に任命されたものなのでもともと外交官などだったということではないはず。自分がアイルランド系なので、アイルランド関係のチャリティなどに熱心だったから、ということみたい。
生業は昔からスティーラーズ関係だったっていうことでしょうね。



■南


Houston Texans
Robert C. McNair
1937
2002-
1960年に、コジェネレーション(ガスや石油で発電しつつ、その排熱を利用して給湯や空調もできる効率的なシステム)の会社を立ち上げた。その会社は1999年にエンロンに売却、財を成す。今では発電所のオーナー権なども持っていて、自身の会社The McNair Groupは金融系にシフト、不動産関連や投資を主な事業にしているらしい。
1998年にNFLフランチャイズ権を獲得、2002年からテキサンズとしてリーグに参加。


Indianapolis Colts
Jim Irsay
1959
1997-
大学卒業後コルツの運営に参加、わずか2年でVice President and General Managerまで上り詰める。だってオーナーが父親だったんだもん。そして父親の死後はチームも相続。
で、父親Robert Irsayはというと、軍事産業で働いていたが、二次大戦後に、そのさらに父親と暖房や空調関係の事業を行って成功。それはZurn Industriesに売却、それを元手に当時LAにあったラムズを買って、当時ボルティモアだったコルツと交換、それからインディアナポリスに引っ越した。


Jacksonville Jaguars
Wayne Weaver
1935
1993-
靴屋チェーンShoe Carnivalと、アパレル屋Nine Westの創業者。財を成してエクスパンション時にフランチャイズを購入。


Tennessee Titans
Bud Adams
1923
1960-
ネイティブ・アメリカン、チェロキー族の人で、ヒューストン周辺での石油産業Adams Resources & Energy Inc.が本業。
NFLに吸収される前のAFLの創設者であり、最初はヒューストンでのフランチャイズを持っていた。オーナーは変わらないまま、オイラーズが移転、名前を変えてタイタンズに。


■西


Denver Broncos
Pat Bowlen
1944
1984-
父親がカナダで石油関連事業に成功。自分は大学卒業後、弁護士として出世した。同時に父親の会社にも関係、そちらでは不動産開発や鉱物産業分野に携わった。
教育分野への寄付を積極的に行っていて、ブロンコスも倒産しそうなときに買い取って救ったということらしい。


Kansas City Chiefs
Clark Hunt
1965
2006-
チーフスは、創設者でありオーナーであったLamar Huntの死後、その子供たち4人が25%ずつ相続した。その中の1人。だたし、Clark Huntが4人の中心でありチーフスのChairman and CEOなので、実際の運営は彼が行っていると思っていいんだろう。
もともとClark Huntはゴールドマンサックスでアナリストとして働いて、その後MLSの創設に関わっている。組織の運営やマネジメントは専門分野ということかもしれない。
父親のLamar Huntは石油王とも言われる大金持ちで、NFLの創設の中心。ブラウンズ、ブロンコスに続く、ボンボン属性が基本だけど自分の能力でも成功してるって例なのかな。


Oakland Raiders
A.D. Football, Inc.
1976-
Al Davis
1929-2011
アル・デイビスが死んじゃったので、現在はちょっと代表者がだれになるのかペンディング状態らしいけれど、とりあえず法的にはデイビスの生前からチームを所有しているのはA.D. Football, Inc.となっていた。
そしてチーム所有がA.D. Football, Inc.なのはいろいろと面倒な背景があるようで。
デイビスは大学を出てからフットボールのコーチになり、いろんなところで経験を積みつつ、33歳でレイダースのヘッドコーチになった。そのときのレイダースは地元の実業家多数が共同で所持していたみたい。しかしチームは赤字でオーナーも嫌になる人が多かったらしく、最終的には3人にまで減った。その後、デイビスはAFLのコミッショナーになるが、NFLに吸収されてリーグでの仕事はなくなる。で、レイダースに戻ってきた。
そのときデイビスはオーナーになりたかったんだけどあまり金はなく、共同オーナーを2人見つけて、自分は10%の株主として運営に食い込む。しかし、その後共同オーナーの1人がオリンピック見物に旅行にいっている間に、チーム運営の権限を全て自分に集めるってな契約書を作成し、もう一人の共同オーナーを巻き込んで、多数決2票(vs欠席1票)で書き換えちゃった。で、出資割合からしたら圧倒的に少ないんだけれども、実質的なオーナーに納まっちゃった、という策士。さすが。
その後死ぬまでに67%は買ったみたいだけど、それでもあれだけの圧倒的な独裁イメージからしたら意外だね。


San Diego Chargers
Alex Spanos
1923
1984-
不動産開発業A. G. Spanos Companiesを設立。一代でビリオネアにまで成長したらしい。
チャージャーズ1984年に60%の株を買ったのをはじめとして買いまし続け、現在では97%を持つ。実務はすでに息子に譲っている様子。またひとつ相続系のチームが増えるね。


※基本wikipediaの拾い読みと勢い余った意訳なので、なにか問題のある箇所がございましたらお知らせください。

※2011/11/07、タイタンズについての説明で「タイタンズ」とすべきところが「テキサンズ」となっていたのを訂正しました。