NFLオーナー物語(NFC編)


昨日に引き続きまして、オーナー群像。NFC編です。


■東


Dallas Cowboys
Jerry Jones
1942
1989-
大学卒業後、父親の経営していたModern Security Life of Springfieldに、executive vice presidentとして入社。いきなり副社長だか、各部門長を束ねる立場だか、そんな感じのボンボンパワー。その後いくつか起業や投資に失敗したらしいものの、エネルギー資源関係の会社Jones Oil and Land Leaseが当たった。
そして1989年にカウボーイズを1億4000万ドルで買収。


New York Giants
2005-
John Mara
1954
ジャイアンツの前オーナーであるWellington Maraの長男。大学卒業後、すこし弁護士(代理人?)として働いてから、91年にExecutive Vice President and Chief Operating Officerとしてジャイアンツ運営に。2005年に父親が死んで相続。
もともとジャイアンツを創設したのは祖父のTim Mara。この人は当時合法だったブックメーカーに携わって、子供のころはノミ屋として、成長してからは胴元として稼いだそうな。

代表者としてはMaraみたいなんだけれど、ジャイアンツはぴったり半分のオーナーがもう一人。

Steve Tisch
本業はテレビや映画のプロデューサーらしい。代表的なお仕事に「Forrest Gump」、「American History X」、「Snatch」など。
ジャイアンツは2005年に父親から相続。父親Preston Robert Tischは、91年に権利の半分を買っていた。ちなみに父親はLoews Corporationを兄弟と経営。ガス採掘供給を中心とした会社。


Philadelphia Eagles
Jeffrey Lurie
1951
1994-
ハリウッドで映画産業に関わってお仕事、1985にはChestnut Hill Productionsという会社を立ち上げ、主にコンサルティングやプロデューサー的役割で稼いだらしい。そんでもってイーグルスを買った、と。


Washington Redskins
Dan Snyder
1965
1999-
17歳で団体バス旅行会社を企画し(これは失敗したらしいが)、20歳で大学をやめて飛行機旅行会社を企画し、それが成功して一気に稼いだ。
その後はマーケティングをアウトソースで請け負う会社をつくったり、主に病院などを掲載場所とした広告代理店をやったり、たくさんの空港にプライベート・ラウンジをつくっていったり、根っからの商売好きっぽい。
レッドスキンズは1999年に前のオーナーの死去にともない売りに出てたのを購入。この資金も借り入れで用意するってな商売人っぷり。


■北


Chicago Bears
Virginia Halas McCaskey
1923
1983-
創設者でありプレーヤー、コーチとしても伝説的存在のGeorge Halasの娘。父親の死後チームを相続。歴史も文化も盛りだくさんなチームだけど、オーナーシップについてはシンプルすぎて書くことがない。


Detroit Lions
William Clay Ford, Sr.
1925
1964-
フォードの創始者Henry Fordの末っ子。そのままフォードで働いてきたが、すでに引退している。
ライオンズは1963年に買い取った。現在の実質的な運営はすでに息子が行っている様子。


Green Bay Packers
Green Bay Packers, Inc.
1923-
パッカーズは株(共同オーナー権)を発行して資金を集めているので、特定のオーナーはいない。Green Bay Packers, Inc.はパッカーズを運営するNPOで、ここの社長が、他のチームでいう筆頭オーナーの役割を担っている。
創設時は、コーチ兼監督兼オーナーの Earl "Curly" Lambeau が協賛者を集めていたが、筆頭スポンサーの缶詰屋が手を引いたところで資金難になり、現在の広く株主を集める形に移行したとのこと。なのでオーナーは現在発行されている4,750,937株を持っている、112,158人。
株は今までに、1923年、1935年、1950年、1997年に株を発行、増資している。そして来年あたりまた売られるんじゃないかって方向らしい。でもルールがあり、株を持っていても、それを売ったりあげたりすることはできない。純粋にチームを支えているという認識で、金銭的に利益を得られる投資ではない。これもまた面白い形。
日本でもライズあたりがこういう風に運営できたら良いのにねーって思うよ。


Minnesota Vikings
Zygi Wilf
1950
2005-
両親がホロコーストを生き延びたというユダヤ人。小さいころ両親と共にアメリカに移住、アパート運営から始めて、やがて大きな不動産開発業に成長させた商売上手。いろんなことに手を出すなかでのNFLチーム所有って雰囲気。


■南


Atlanta Falcons
Arthur Blank
1942
2004-
ホーム・デポの創業者の1人だそうだ。いわゆるホームセンター、卸・小売・量販店チェーンの元締めだな。
なんとなく地味な印象の商売だけど、しっかり儲かってるんだなあ、チームカラーと重なるなあ、などと。


Carolina Panthers
Jerry Richardson
1936
1993-
チームの創設者。しかし元NFLプレーヤーで、莫大な金持ちってことではない。地元にプロチームを作ろうと賛同者を集め、客を集め、政治家を動かして、エキスパンションでのリーグ参加を掴み取ったっていう行動派庶民。リーグ黎明期によくいたタイプのオーナーって感じなのかな。


New Orleans Saints
Tom Benson
1927
1985-
車のディーラーチェーンを、ニューオリンズ圏とサンアントニオ圏で展開、成功させる。さらにアメリカ南部でいくつかの小さな銀行を買収、それらはすでにWells Fargoに売却しているが、おそらく結構な利益がでたんだろう。
1980年代の不況下、セインツがジャクソンビルに移転しようとしていたのを聞いて、地元に引き止めておくために買収したらしい。


Tampa Bay Buccaneers
Malcolm Glazer
1928
1995-
ユダヤ系宝石商の家に生まれ、いろんな仕事を手広く展開して稼いでいった様子。今ではFirst Allied Corporationという会社にまとめているが、その事業内容は食品製造業、船舶用品、ヘルスケア、不動産業、エネルギー関係、テレビ産業と多岐にわたっている。
バッカニアーズは、前オーナーのHugh Culverhouseが死んだときに、その息子たちを経営陣に留めつつ購入したとのこと。
プレミアリーグマンチェスター・ユナイテッド筆頭株主でもあるらしい。


■西


Arizona Cardinals
Bill Bidwill
1931
1972-
チームは父親であるCharles Bidwillから相続。父親はシカゴの成功したビジネスマンであり裕福な弁護士だったそうな。アル・カポネと並ぶ実力者とか書いてあるからすごかったんだろう。そんな父親がシカゴ時代のカーディナルスを買った、とのこと。


St. Louis Rams
Stan Kroenke
1947
2010-
不動産開発事業Kroenke Groupを設立、成功する。ちなみに嫁はウォールマートの創業者の娘だそうな。
その後Kroenke Sports Enterprisesを設立、スポーツチーム経営を行う。
ラムズの他にも、
NBAのDenver Nuggets
MLSのColorado Rapids
NHLのColorado Avalanche
プレミアリーグアーセナルなどを所有。スポーツ好きの夢を体現してるねえ。


San Francisco 49ers
Jed York
年が書いてないけどすげえ若い。
2009-
大学を出てからいったんはNYで金融系に就職するが、2005年に家族が運営している49ersに参加。2008年末から経営トップに、オーナーシップも2009年から筆頭。
49ersはもともと、1977年にJed Yorkの祖父、Edward J. DeBartolo, Sr.が買った。この人は不動産開発、特にショッピングモール開発で莫大な富を築いて、49ersは買ったけど運営はすぐに息子であるEdward J. DeBartolo, Jr.に任せたらしい。
で、Edward J. DeBartolo, Jr.の姉だか妹だかがJed Yorkの母親で、Edward J. DeBartolo, Jr.とは仲が悪そうな雰囲気もありつつ、オーナーシップはやがて3代目Jed Yorkに回ってきた、と。


Seattle Seahawks
Paul Allen
1953
1997-
マイクロソフトの共同創業者。稼いだ後は投資などを行っている。
1988年にはNBAのPortland Trail Blazersを買っている。1997年にはシーホークスを、前のオーナーがカリフォルニアに移転したがってるのを阻止する形で購入した様子。


■という感じです。

集計しますと、
・ボンボン:14
・成金:15
・庶民:3
となりました。圧倒的に金持ちが多い。そりゃそうですよね、プロチームを持つなんて、金持ちスポーツ好きの最高の道楽でしょう。


ちなみにオーナーの本業はこちら。
・金融系:5
・不動産:4
・流通・小売:3
・石油関係:3
・製造業:2
・IT・テクノロジー:2
・商売いろいろ:2
・映画産業:1
意外と小売とか製造業とか地味な分野が目立ちます。がっぽり稼いじゃったからちょっと球団でも買おうかーってのとは違うのかもしれません。プロチームを持つのが夢だったとか、そういう人が結構いるのかもしれません。


さらに、オーナー業は道楽とばかりは言えません。
全オーナーのうち、生業がチーム運営という人が10人います。これはチームが黒字であり、ビジネスとして独立して成り立っているということなんでしょう。日本のプロ野球とは全く違う世界ですね。
すると当然、チームは資産となるわけですから、相続したり家族で経営したりという例もでてきます。
家族からチームを相続したオーナーは10人、
その中で創設者直系の子孫は4人、
創設者本人が2人。

親や親類がプロチームなんてもんを持ってたわけですから、分類的にはボンボンになるんですが、どうもこの相続系オーナーのほうが、買収系オーナーよりも地道にチーム運営をしている印象が強い。チームへの愛情みたいなものもだんだん増していきますし、文化を生んでいく源泉がここかもしれません。
いやあ、いいなあ、俺にも1チームくれないかなあ。